第2回散歩得業生採用試験問題結果

(99年10月31日〆切)
問題はこちら

回答提出者…1人
合格者…1人

◎総評
 今回提出された方は、わたつみさん一名でした。しかし、見事合格です。
 わたつみさんには「散歩得業生」の称号と共に、1000散歩円を進呈いたします。
 

◎採点&模範解答

答案
> 問題1(断章2-9の08より、クシュカ語のことわざ)
> ・skarran  khurz  tagh  edan  us^kvel.
> 訳:汝の羊たちは群れることを欲し、馬群は出立する。

 新城訳は、

 「民は嘆くが、軍勢(=馬の群)は進む」

 でありました。冒頭のskarranは実はskarrin「(彼は)嘆く」の過去形なのですが、語彙集に載せそこねていた単語なのでした^-^)。
すみませんでした〜!>挑戦して解けなかった他の皆様
 が、それにもめげず、ここまで解いたわたつみ様、あなたは偉い!
 おそらくarrassin「欲する、憧れる」の活用とみて翻訳されたのだと推測しますが、う〜む、なかなか鋭い着眼点。
 とくに、
> 問題1はことわざとあるので、意訳しなくてはいけないのでしょうか? その場合は、
> 羊=民衆、市民  馬=戦士、冒険者、あるいはus^kuvaを示していると考えます。
 というのは大正解です。
 クシュカは遊牧帝国なので、「羊:馬」の対比は多く用いられるのであります。

 ちなみにtaghは逆接の接続詞なので、ここでは「〜するんだけども、しかし」のニュアンスが欲しかったところ。
とはいえ、不明語彙を敵に回してここまで訳せれば立派。10点満点で8点!
 

> 問題2
> ・us^kn  urnavn  lakh  hilvelai  vnakver  lahuande.
> 訳:白い馬は星々の中を夢見るように彷徨った。
>

新城訳、
「白馬(たち)は星々のはざまを(=天界を)、夢見るように彷徨った」

 日本語訳で複数形を出すことが困難であることを考えれば、これは10点満点でしょう。
 lahuandeは、lahuin「くだる、さまよう」の過去形三人称複数。主に流体の制限されない運動をあらわすために用いられますが、
ここでは無目的にさまよう馬群を形容するのに使われています。
 
 

> 問題3
> ・za  vnakilunga  lohnimel,  vnakver  vossiel,  ve  yataitaiel  lakh
> vnakilunda.
> 訳:夢から誕生し、私は夢見るように旅をしてから夢の中へ再び渡る。

新城訳、
「夢の裡より吾らは生まれ、夢見るごとくに日々を暮らし(直訳:旅をし)、そして夢の裡へと還るのだ」

 この文の鍵は、vnakiy`「夢、夜の王国」の格変化をどう訳するかにありまして、
 答案は見事にこの問題をクリアしております。感想で、

> 問題2、3ではvnakver  vnakilunga  vnakilundaという語句がポイントだったのかも
>知れませんが、「夢」としかとれなかったのが悔いが残ります。問題2、3では全体的
>に単語の終わりの部分の活用している部分が、正確に判断できなかったです。

 とありましたが、ここまでできれば立派なもの。動詞の語尾-ielは現在形一人称複数なのですが、
 そこまで読めというのは酷というものでしょう。文意は、人の一生を(仏教の影響を受けた遊牧詩人が)詠んだものとされておりますが、
遊牧民の比喩のニュアンスをつかめば「旅、移動」がそのまま人生や時間を表現するのに用いられることもご理解いただけると思います。
 ちなみにlohnimelはlohnielの誤植と思われます。も、もうしわけない〜!
 てなわけで10点満点で9点。

 合計27点(30点満点で)、見事合格です!!

 というわけで、今後もクシュカ語のご愛顧をば、よろしくお願いいたします……^-^)
 

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